お客様から結構な頻度でご相談される「無麻酔歯石取り」。
麻酔のリスク0で歯石がとれるなんて、一見するととても魅力的ですよね。
でもちょっと待って!その方法、本当に効果的なのでしょうか?
結論:おすすめしません!
はじめから結論を言ってしまいますが、ハッキリと言います。
無麻酔歯石取りは「おすすめできません」!
お客様からご相談を受けた際も、そうお答えしています。
この後メリットデメリットをご紹介しますが、それでも無麻酔歯石取りはやらない方が良いですよ。
歯石が付いているとどうなる?
そもそも、何故歯石が付いているといけないのでしょうか?
- 細菌が付きやすくなり歯周病リスクが高まる
- 口臭の原因になる
- 内臓への影響
実は、歯石そのものがこれらの影響を及ぼすわけではないそうです。
歯石の表面はザラザラしているため歯垢(プラーク)が付きやすく、その歯垢が様々なトラブルを引き起こします。
呼吸器・心臓・脳などへも悪影響があり、最悪命を落としてしまうことも。
人間と同じく、歯はキレイな状態を保つに越したことはありませんよんね。
ついてしまった歯石を取ろうと考えた時、麻酔下での処置か、無麻酔か…。
無麻酔歯石取りのメリット
- 見た目が綺麗になる
- 口臭が減る
- 麻酔のリスクがない
- 安い
- 気軽にできる
といったところでしょうか。
見た目が綺麗になる
よくインスタやTwitterなどでビフォーアフターの画像、見かけますよね。
ガッチガチの歯石がとってもキレイになってる♪
むかーし昔に働いていたサロンでは無麻酔歯石取りを行っていたので、私もやったことがあるのですが、あんなにキレイになんて絶対取れないんですよ。
なので、技術自体はとてもすごいと思います。尊敬。
自分でもやっていた私が言うのもなんですが、歯石取りって医療行為なんじゃ…。
ちょっと調べてみてもよく分からなかったのですが、少なくとも昔の私のように何の知識もないトリマーがやっているサロンもあるということです。
トリミングサロンで、「歯石取りもしますよ~」っていうのはそういうことです。
口臭が減る
歯石や歯垢が減るので、口臭は減ると思います。
しかしこの後書きますが、大事な部分がキレイになっていない。できないんです。
なので、口臭は完全になくなる訳ではありません。
歯石取りはしたくないけど口臭は何とかしたい!という方にはこちらの商品がおすすめです。
麻酔のリスクがない
麻酔下での処置の場合、最も気になるのが麻酔のリスクではないでしょうか。
当然麻酔をかけるのでリスクはゼロではありません。
「麻酔のリスクはおよそ0.05%」
これが高いと感じるか低いと感じるか…。
安い
麻酔そのものプラス、麻酔をかけるためには様々な検査が必要になります。
麻酔をかけた処置の場合は同時に抜歯も行うケースが多いので、その分費用もかさみます。
その点無麻酔歯石取りは処置代だけ。
基本的に抜歯は行いませんので、かなり格安です。
トリミングサロンなどのイベントで気軽にできる
月に一度歯石取りイベントをやったりするトリミングサロンもあります。
歯石取りのプロを招いて行う為、毎回予約が取れないような所もあるそうです。
実際経営者仲間でも、そういったイベントを定期的に実施しているというサロンが多いです。
「やってみたら?」と誘われることもあるのですが、私自身がそもそも無麻酔歯石取りには反対なので絶対に開催しません。
やれば儲かるとは思いますけど。笑
無麻酔歯石取りのデメリット
- 歯周ポケットのなかまではキレイにできない
- 歯周病の進行に気付けない
- 犬に負担がかかる
- 歯石が付きやすくなる
歯周ポケットの中まではキレイにできない
見えない部分まではキレイにできません。
が、最も重要なのがこの歯周ポケットなんです。人間もそうですよね。
麻酔下での歯石取りとは使う道具も違いますので、やはり同じようにはできません。
歯周病の進行に気付けない
見える範囲はキレイになるので、油断してしまいますよね。
「こんなにキレイなんだから大丈夫」
ところが、実は歯周病が進行していた…なんてことになります。
無麻酔での歯石取りは結局「その場しのぎ」になってしまうのです。
犬に大きな負担がかかる
その道のプロはどのような方法で行っているのかは分かりませんが、基本的には犬は口を触られるのを嫌がります。
私が動物病院で看護士をやっていた時は、かなり強い保定で行っていました。
「こんなんしてまでやることじゃないんじゃ…」と強く思ったのを覚えています。
中にはチアノーゼになってしまうような子もいて、かわいそうでしたね。
歯の表面に傷ができ更に歯石が付きやすくなる
ご自分の歯石取りを経験した方には分かると思うのですが、歯石を取った後は歯の表面を磨いてもらいますよね。
歯石取りでできた小さな傷をなくすための作業です。
その作業がないため、無麻酔での歯石取りでは傷が残ったままになり、逆に歯石の付きやすい歯になってしまうのです。
麻酔のリスクはどのくらい?
飼い主としては最も気になるのが全身麻酔によるリスクですよね。
先ほども書きましたが、犬の全身麻酔による死亡率はおよそ0.05%ほどと言われています。
だいたい2000頭に1頭ということになります。
ただしこちらは健康な状態の犬の場合ですので、疾患があったり高齢犬だと確率が上がります。
なので、年齢や歯の状態を見て時期を検討する必要がありますね。
麻酔をかけて歯石を取った方が良いのか、リスクが大きければ「やらない」という選択肢もあるかと思いますので、かかりつけの先生とよく相談しましょう。
麻酔ありの歯石取り(スケーリング)っていくら位でできるの?
いくら歯石が良くない物とはいえ、歯石取りは気軽にできるような金額でもありません。
私の愛犬が先日3頭歯石取りをしたのですが、だいたい1頭10万円前後でした。
金額の差は「抜いた歯の本数」によるところが多く、たくさん抜けばその分金額も上がっていきます。
しかしこの10万円、恐らく高い方だと思います。
私の通っている動物病院では、術前の健康チェックをかなり細かくしてくれますので、「ドッグドック(健康診断)」と歯石取りが一緒になった金額、という感じです。
少し調べてみたところ、3万円ほどでやってくれる病院もあるみたいですよ。
もちろん検査や施術の内容は異なりますので、事前に確認をして見積りを出してもらうのが良いですね。
正直ピンキリといった感じですので、納得いくまで調べる、問い合わせる、確認するのが大事です。
愛犬の歯と歯茎を守る為には地道な歯磨きしかありません
もちろん歯石取りをすれば一旦は綺麗になりますが、放っておけばまたどんどん歯石が溜まってしまいますので、綺麗なうちからせっせと歯磨きを頑張りましょう。
…という私はなかなかそれができていませんが。。。
犬は虫歯にはなりにくいですが、歯石が付くスピードは人よりも早いです。
人はだいたい1週間で歯垢が歯石になりますが、犬の場合は3日と言われています。
毎日とはいかなくても3日に1回は歯磨きをしてあげたいところですよね。
私も頑張ります!
歯ブラシは定番ですがやっぱりシグワンが使いやすい!
普通の歯ブラシよりも犬が嫌がらないのでおすすめです。
個人的にはバニラ味とかよりもチキンやレバー味の方が喜ぶのではないかと思います。
まとめ:歯石取りは麻酔下で行いましょう
無麻酔での歯石取りがおすすめできない理由、おさらいです。
- 歯周ポケットの中まではキレイにできない
- 歯周病の進行に気付けない
- 犬に大きな負担がかかる
- 歯石が付きやすくなる
無麻酔での歯石取りが意味のないものだとお分かりいただけたでしょうか。
歯周病が進むと歯がグラグラして、犬は痛みを感じて食事がしずらくなります。
歯根や顎の骨が溶けてしまうことも!
歯石が付いていると内臓にも悪い影響がありますので、なるべくお口の中はキレイな状態を保ってあげたいですよね。
こまめな歯磨き、それでも付いてしまった歯石に関しては、麻酔下でしっかりキレイにしてもらいましょう。