「愛犬のブラッシングをしてあげたいけど、やりかたが分からない」
そんな飼い主様に、ブラッシングの正しいやりかたをトリマーが教えます。
意外と難しい犬のブラッシング
以前私はお客様に「お家でもブラッシングをしてあげてくださいね」とお伝えしていました。
しかし、母が愛犬のブラッシングをしているのを見て、一般の飼い主様には難しいのではないかと感じました。
正しいブラッシングのやりかたで行わないと、毛玉が取れないだけでなく犬にも痛い思いをさせてしまいます。
愛犬は皮膚が真っ赤に!
それから私は、お客様にはなるべく自宅でのブラッシングは控えてもらい、毛玉の出来やすい子はトリミング頻度をあげていただくようお願いしています。
とはいえ、トリミングの回数を増やすことは簡単ではありませんし、愛犬とのコミュニケーションのため、抜け毛対策に、ブラッシングをしたいという方も多いでしょう。
そこで今回は、自宅で安全にブラッシングをするための道具ややりかたのをご紹介します。
ブラッシングの目的
ブラッシングには様々な効果があります。
- 毛玉やもつれの予防
- 抜け毛を取り除く
- 汚れ・臭いの軽減
- スキンシップ
- 血行促進
- 皮膚・被毛の異常チェック
などなど。
毛玉やもつれの予防
コートの長いプードルやヨーキーはもちろん、チワワやダックスの耳の飾り毛、尻尾などにも毛玉はできます。
耳の後ろのピンポイントな毛玉の取り方はこちらの記事で。
絡み合った毛の根本は皮膚が引きつり、犬は痛みを感じています。
また、不潔になりやすいため毛玉の下の皮膚がただれたり、フケが溜まったりしてしまうことがあるので、注意が必要です。
毛玉になってしまってから慌ててブラッシングすると、高確率で皮膚を傷つけますので、日ごろから毛玉ができないようにケアすることが大切です。
抜け毛を取り除く
季節の変わり目などの換毛期には、ごっそりとアンダーコートが抜けます。
愛犬がブルブルっとすると抜けた毛がふわふわ…掃除しても掃除しても毛が舞うので、抜け毛の時期は大変ですよね。
ブラッシングで不要な毛を取り除いてあげると、ふわふわ舞う毛がだいぶ減ります。
換毛期はいつもより念入りにブラッシングしてあげましょう。
汚れ、臭いの軽減
ブラッシングのみでも多くの汚れは落とすことが可能です。
ほこりやちり、今の季節だと花粉などもブラッシングで取り除くことができます。
花粉症やハウスダストアレルギーの方はマスクをしてブラッシングすることをおすすめします。
スキンシップ
ブラッシングは愛犬との重要なスキンシップの時間です。
多頭飼いの場合は特に1対1で触れ合う時間が少なくなるので、ブラッシングは愛犬にとって飼い主さんを独占できる大切な時間です。
お互いに楽しんでできるブラッシングを目指しましょう。
血行促進
ブラシによる適度な刺激は血行促進に繋がります。
細かい所までブラッシングするのが難しい場合は、背中などの大きい範囲だけ優しくやってあげましょう。
それだけでも十分に効果があります。
皮膚・被毛の異常をチェック
トリマーはシャンプー中やブローの際、犬の皮膚・被毛の状態をよく観察します。
何か異常があった場合は飼い主様にお伝えしますが、日ごろからブラッシングしていると自分でも気づくことができます。
フケや赤み、腫瘍など、早期に発見できると治療もスムーズです。
普通に観察するよりも細かい所までよく見ることができますので、健康チェックも兼ねてやってみてくださいね。
ブラッシングに使用する道具
どんな道具を使うのかも重要になってきます。
最近では100円ショップなどでもブラシ類を見かけることがありますが、ピンがとんでもない方向を向いていたりして危険なので、安心して使える物をご紹介します。
スリッカーブラシ
針金のようなピンがびっしりと付いたブラシです。
犬のトリミングでは最もよく使われるタイプのブラシになります。
柄の部分を下からスプーンを持つように持ち、皮膚に対して並行にゆっくり動かすことを心がけ、決してひっかくような動きはしないように注意してください。
見た目の通り皮膚に強く当たると痛いです。
使用する前に自分の皮膚に当てて強さをチェックしてみてくださいね。
トリマーは色々な持ち方をしたり、ブラシを素早く動かしますが、真似をすると愛犬に怪我をさせてしまいますので気を付けてください。
ゆっくり優しく、で大丈夫です。
ピンブラシ
ゴムの台座にピンが並んだ、人間のヘアブラシと同じようなブラシです。
フルコートのヨーキーやマルチーズなど、主に長毛種に使用します。
ピンの先が丸くなっているので、スリッカー程痛くありませんが、こちらも力を入れすぎないように使用してください。
持ち方は、自分の髪を梳かす時と同じで大丈夫です。
がしっと掴むのではなく、力を抜いてそっと指を添えるイメージです。
毛が切れてしまわないように、優しく梳かしてあげてください。
コーム
最後の仕上げに使ったり、毛玉を見つけるために使います。
人差し指と親指でつまんで持ち、他の指は添えるだけで良いです。
上から下に向かって梳かし、毛を逆立てないように気を付けてください。
コームで毛玉はとれませんので、無理に引っ張ったりしないでくださいね。
獣毛ブラシ
豚や猪の毛でできています。
主に短毛種(ミニチュアピンシャー、スムースコートチワワなど)に使います。
バンドが付いているものが多く、指をかけてマッサージするように首からお尻に向かって撫でるようにブラッシングしてあげてください。
艶が出てとてもきれいになりますので、短毛種でも是非ブラッシングしてあげて欲しいです。
ブラッシングスプレー
ブラッシングの際の静電気防止、消臭効果などのために使います。また、毛玉が取れやすくなるような物もありますので、用途によって使い分けてください。
ドライヤー
洗っていないのにドライヤーを使うの?と思われるかもしれません。
ドライヤーの風を当てることにより毛玉が見えやすくなりますので、小さな毛玉がたくさんあるような場合はドライヤーで風を当てながらブラッシングをしてみてください。
ブローではないので温風ではなく冷風でも十分です。
ブラッシングの手順・注意点
- ブラッシングスプレーを遠くから軽くかける。
- ドライヤーの風を当てながら、スリッカーまたはピンブラシ、獣毛ブラシでブラッシングする。
- コームを使ってもつれ、毛玉がないかチェックする。
- 引っかかった所を再度ブラッシング。
- コームで毛の流れを整えて終わり。
最初はお尻の方から始めてあげましょう。徐々に頭の方に向かっていき、嫌がる足先や耳、尻尾は後まわしで大丈夫です。
ドライヤーを使わない場合は、左手で毛をかき分けます。
一生懸命になっていると知らないうちに力が入り、犬の皮膚を傷つけてしまいます。
強さは大丈夫かこまめに確認しながらやってあげてください。
毛玉を見つけた場合は、根本からガリガリするのではなく、毛先の方から少しずつほどいていってあげてください。
大きな毛玉ははさみで切ってしまいたくなりますが、犬の皮膚は想像以上に伸びます。危険ですのではさみは使わないようにしてください。
細かいブラシの動かし方は、サロンでトリマーに聞くのが良いかもしれません。
快く教えてくれますので、遠慮せずに聞いてみてくださいね。
まとめ:難しい場合はプロに任せて
ブラシの力加減は意外と難しく、トリマーであっても毛玉取りはかなり慎重に行っています。
犬の皮膚は人間の約5分の1ほどの厚みしかなく、少しの刺激でも赤くなったり出血しやすいです。
ブラシでガシガシすると「スリッカー負け」という状態になり、犬は痛痒く気にして自分でもこすったり引っかいたりしてしまいます。
そうすると余計に悪化して気が付いたら血まみれに・・・。
ということも稀にありますので、力加減だけは本当に気を付けてあげてくださいね。
「毛玉ができないように」予防の意味でブラッシングすることを心がけ、できてしまった毛玉はプロにお願いするのが良いかもしれません。
自宅でのブラッシングはスキンシップや血行促進の目的で軽くやる程度、あとはサロンでしっかりとブラッシングしてもらう、という使い分けも良いですね。
無理矢理ブラッシングすることにより、体を触られること自体が嫌になってしまったりすることもあります。
難しいと思ったら無理せずサロンでお願いしましょう。
うちのサロンでは月額のブラッシング通い放題のプランがありますが、そういったものを利用するのも良いかと思います。
ブラッシングは犬に痛い思いをさせないことが最優先です。
お互いにリラックスして楽しいブラッシングタイムにしましょう。